機能的疾患 Functional Disease

スタッフ

内門 久明、 村岡 範裕、 土井 亮

磁気刺激風景

診療内容

機能神経外科は脳の構造的な異常よりも脳の機能的な異常を解決すること(神経回路の機能調整・制御を行う)を治療の目的としており、実際にはパーキンソン病・手足のふるえ・筋肉の緊張の異常(ジストニア・痙縮など)・痛み・てんかんなどを扱う分野です。当科では、これらの疾患に以下のような治療を行っています。
 
バクロフェン髄腔内投与(Intrathecal baclofen : ITB)療法
バクロフェン(商品名:ギャバロン)というお薬を作用部位である脊髄の周囲へ直接投与することにより、痙縮をやわらげる治療です。体内にポンプを植え込む治療ですから、植え込み前にスクリーニング(効果判定)検査を行います。スクリーニングでの効果が確認され、手術を希望された患者にポンプ植込み術を行います。退院後も、定期的に外来でポンプの薬液補充が必要です。日本でのITB療法は2006年4月保険診療を承認された治療であり、全国的にもITB実施施設は多くありません。当科では2007年10月からITB治療を開始しました。治療適応は重度の痙性麻痺(頭部外傷、脊髄損傷、脳性麻痺等による痙性麻痺)です。主に両下肢痙縮に効果的ですが、両上肢・体幹の筋緊張軽減も期待できます。
 
・脳深部刺激療法 (Deep Brain Stimulation = DBS)
視床下核・淡蒼球・視床などの脳深部の標的部位に刺激電極を挿入・留置後、胸部の皮下に植え込んだ刺激装置に接続して電気刺激を行う治療です。対象疾患はパーキンソン病・ジストニアなどの不随運動疾患、難治性疼痛です。以前は施設により治療効果が様々でしたが、ここ10年ぐらいのDBSの研究・開発の進歩により治療適応・効果が明らかになりました。DBSによる治療効果の有無・副作用出現の有無・手術のリスクを検討する必要がありますので、まずは検査入院を行います。検査結果をもとに患者本人・家族との話し合いを行った後、再度手術希望があった場合に脳深部電極植込み術を実施します。DBSは退院後もドーパ剤等の内服薬と電気刺激の調節を行う必要がありますので、定期的に外来受診する必要があります。
 
・脊髄電気刺激療法
疼痛薬物治療等が無効な難治性疼痛(神経因性疼痛と慢性的な虚血痛など)に対して、治療適応となります。治療目的は疼痛緩和や血流改善などであり、疾患・症状により期待しうる改善の程度は異なります。通常は痛みが50%軽減した場合、有効とされています。そのため、この治療のみで疼痛が完全に消失することは少なく、他の治療法(内服・リハビリ等)を併用する必要があります。治療までの手順を簡単に示します。まずは治療効果判定のための検査入院を行います。検査で効果が期待された場合、局所麻酔下で脊椎硬膜外腔に脊髄刺激用リードを留置して、体外から試験刺激を行います。試験刺激後、満足しうる刺激効果が見られた場合に電池内蔵型の刺激装置の植え込みを行います。
 
経頭蓋磁気刺激法(Transcranial Magnetic Stimulation : TMS)
様々な神経・精神疾患に効果があると報告されていますが、施設によりTMSの刺激条件・刺激効果は異なります。当科でのTMSは1995年以来、主にパーキンソン病・ジストニアに対して行っています。最近は慢性難治性疼痛や脳卒中後運動麻痺の改善、統合失調症・うつ病等の精神疾患(当科では行っていません)にも効果があるとの報告もあります。
 
ボツリヌス療法
日本では1996年に眼瞼痙攣に対して承認され、2000年に片側顔面痙攣、2001年に痙性斜頸の追加効能が承認となっています。2009年2月に「2歳以上の小児脳性麻痺患者における下肢痙縮に伴う尖足」の追加効能が承認されました。当科では全適応疾患での使用実績がありますが、痙性斜頚(全身性ジストニアを含む)に対して最も多く使用しています。片側顔面痙攣に対しては神経血管減圧術等の外科的治療に関する説明も行った後、希望された場合に行っています。
 
最後に、同じ疾患でも患者個々の症状・経過で治療の方法・適応・効果が異なります。また、今後も新たな治療法が期待される分野ですので、治療法の決定には十分な話し合いが必要です。
文責:村岡 範裕

広畑 優

­a­s­a­r­u­H­i­r­o­h­a­t­a­M­D­,P­h­D­昭和6­2­年久留米大学卒医学博士日本脳神経外科学会専門医、日本脳神経血管内治療学会指導医日本脳卒中学会専門医専門:脳卒中、脳血管内治療

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